熱性けいれん
Febrile Seizures
奈良隆寛 北九州市立総合療育センター・小児科(福岡)
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◆病態と診断
熱性けいれんとは,上気道感染などによる38℃以上の発熱に伴ってみられるけいれんで,中枢神経感染症,水電解質不均衡など,けいれんの原因になる異常のないものをいう.6か月から5歳の小児の3%にみられる.
初めて発熱に伴うけいれんが起こったときには,熱性けいれんの既往歴がないので,髄膜炎や急性脳炎・急性脳症との鑑別を要する.ここではけいれん終了後の意識レベルの低下がpost-ictal sleepなのか,それとも意識障害によるものなのかは鑑別が難しい.病歴を詳しくとり,けいれんの前に意識レベルの低下があるようなら,急性脳炎や急性脳症を疑う.神経学的異常所見があればなおさらである.脳炎・脳症との鑑別が難しいときには,脳波,CT,髄液検査を行う.
けいれんが続いている場合には,セルシン⇒0.3mg/kgを静脈内投与してけいれんを止め,鑑別診断を行う.
◆治療方針
A.発熱時の予防的投与
単純型の熱性けいれんを1回起こしただけでは予防的投与は必要ない.なぜなら1回しか発作を起こさない確率のほうが高いからである.@短期間に発作をくり返すときと,A15分以上持続する発作の既往が,ダイアップ⇒坐薬頓用の適応になる.
処方例
ダイアップ⇒坐薬 1回0.4−0.5mg/kg 頓用
38℃以上の発熱時を坐薬頓用の基準とするが,これ以下でもかまわない.8時間たっても解熱しないときには,もう1回だけ同量を投与する.また,投与期間は熱性けいれんが起こりにくくなる4−5歳まで続けるという方法が無難であるが,1年でいったんやめてみて再度起こったら再開するという方法もある.
B.発熱に関わらない持続的内服
適応は以下のとおりである.
(a)38℃以下でけいれんがみられる場合
(b)重積発作の既往がある場合
(c)ダイアップ⇒坐薬でうまく予防できない場合
このときには,デパケン⇒かフェノバール⇒のいずれか1剤の持続内服を1年間行う.
処方例 下記のいずれかを用いる
1)デパケン⇒シロップ 1日20−25mg/kg 分2
2)フェノバール⇒エリキシル 1日3−4mg/kg 分2または分1(夜1回)
■患者説明のポイント
・発作をよく観察し,体温を測定する.
・発作終了時の嘔吐に伴う誤嚥に注意していれば生命の危険はないのであわてない(発作時にこどもの側にいることが大切で,あわてて電話をしにいったりしないこと).
・すべてがてんかんに移行するわけではないことを説明する.
・予防接種は副反応の発熱時に,発熱時のダイアップ⇒頓用で予防できれば,同様にダイアップ⇒の予防投与を行う.
今日の診療プレミアム Vol.13 版 (C) 2003 IGAKU-SHOIN Tokyo